* 「聞き耳頭巾」を持つ人々:ジム・ノルマン *

【ジム・ノルマン(Jim Nollman)の異種間音楽】

 いかにして「聞こえない声を聴くか」という点から異種間コミュニケーションを試みるなら、ジム・ノルマンこそ、このサイトに最も共鳴してくれているかも知れない。
  ノルマンは、人として、ヒト以外の野生動物と、"真に対等の"立場に立ってコミュニケーションを試みようとしてきた。生きものとの対話は、ヒト側からの押しつけや独りよがりのものではなく、常に互いを信頼し、尊重したものでなければならなかった。これは、「異種間コミュニケーション」の科学的研究として取り上げられることの多い、人間の「知能」の優位を前提として動物を訓練し、言語能力を含むその知能を「テスト」する立場と真っ向から対立する。ノルマンは、コミュニケーションにおける”聴く立場”の重要性を強調する数少ない語り手だ −− それを射程に入れた異種間コミュニケーションは、人間の能力の枠組みから人間の科学によって捉えられる事象を越え、新たな位相において創造されていかなければならない。
 ノルマンのコミュニケーションのもう一つの大きな特徴は、彼が選択した手段が、音楽であったことだ。主要な科学者たちが「言語実験」の形で採用する、ヒト言語を相手に学習させることによるコミュニケーションをその手段として選ばず、アートによって対話を試みた。ノルマンは、音楽やアートを異種間で普遍的な言葉、優れたコミュニケーション形式であるとみなし
た。彼にとってコミュニケーションとは、野生動物とハーモニーを交換することだった。
 以下で、ノルマンの「異種間コミュニケーション」の立脚点や思想のみならず、生き生きとしたコミュニケーションの姿や、彼が経験的に取得していったノウハウなどに触れてみよう。

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