* 「聞き耳頭巾」を持つ人々:ジム・ノルマン *

【異種間音楽のパイオニア】

 ジム・ノルマンは、1947年、アメリカ、マサチューセッツ州に生まれた。動物や自然、音楽を愛好して育ち、タフツ大学にて英文学を学んだ後、音楽活動を始めた。そして、1973年には、アメリカ国内向けラジオ・ネットワークで放送する、感謝祭の音楽の作曲を依頼され、3百羽の七面鳥と歌う、子ども向けの曲を作曲している。その他、イルカやクジラ、バッファロー、オオカミ、トビネズミ、シカ、ヘラジカなど様々な野生動物との対話を試み、「異種間コミュニケーション」のパイオニアとして知られる。対話の手段は、しばしば手作り楽器となる。ギタープレーヤであり、国際的に認められた、コンセプチュアル・アーティストとして、幾つかのCDを出している。
 彼は、ミュージシャンであるのみならず、"スピリチュアル・エコロジスト"となった(注1) 。環境活動家として執筆・編集・環境保護活動を行う。1994年には国際イルカ・クジラ会議にて来日もする。グリーンピースの最初の海外活動(日本、隠岐島)を指揮し、過剰な漁業の代償として撲滅されるイルカの保護にあたったこともある。
 現在、"Interspecies (Communication)"という組織を創設し、音楽やアートを通して動物とコミュニケートする研究のスポンサーとなったり、オルカやクジラの保護のためのフィールド・プロジェクトを受け持ち、そのコミュニケーションを研究している。Interspeciesの最もよく知られたフィールド・プロジェクトは、カナダの西海岸に棲息する野生のオルカとライブ音楽を通して相互作用する25年間にわたる研究である。最近では、ロシア北極地方にて、クジラの保護を指揮している。彼の進行中のプロジェクトについての情報や、異種間音楽のサンプルを聞くためには、the Interspecies のウェブサイト interspecies.com にあたることができる。
 プライベートでは、現在、ワシントンのフライデーハーバーに住み(ワシントン州北西の端にある小島 San Juan Island)、執筆のかたわら庭造りにいそしみ、岩、苔、水による日本庭園を構成するなど、遊び心を持つ多才な人物である。家族は、著書『イルカの夢時間』『地球の庭を耕すと』にも登場するケイティ夫人と、二人の娘クレアとサシャ。著書から、彼の人となりの多くをうかがい知ることができる。

注1:エコロジストとしての自らの思想、地球や生命との関わり方を、"スピリチュアル・エコロジー(Spiritual Ecology)"とノルマンは名付けている。この立場からの発信は、同名の彼の著書に記されている(邦題は、『地球は人間のものではない』)。スピリチュアル・エコロジーは、ディープ・エコロジーの一支流と位置づけることもできようが、ノルマンは、そこに境界線を引く方を選ぶかも知れない。

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