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【バード・サンクチュアリの思想: 1.中西悟堂の思想 (1/5)】

 自分の望むことを「サンクチュアリ」という形で宣言をしてしまったものの、わたしはこの語について十分に理解していなかった。特に、次のような疑問が生じていた。

1.「バード・サンクチュアリ」は、直訳すれば"鳥の聖地"ということになる。なぜ、「野鳥保護区」といった用語ではなく、やや宗教的な意味合いを持つ「サンクチュアリ=聖地」という用語が用いられるのか。

2.ウトナイ湖サンクチュアリをはじめとする日本各地の「サンクチュアリ」と呼ばれる土地は、何ヘクタールにも及ぶ広さがあり、大きな保護団体や企業でなければ購入・運営はできない。また、多くの場合、敷地内はヒトの立ち入り禁止区域などがあり、専門のレンジャーによって運営され、ヒトが立ち入れる区域や特別の期間を設けて一般の人々の観察や環境教育・自然教育がなされているイメージがある。そうすると、個人で立ち上げて上のような宣言をした土地を、わたしは「サンクチュアリ」と呼んでいいのだろうか。

3.そもそも「サンクチュアリ」と空間を名づけることによって、人々は何を希求してきたのか?

「サンクチュアリ」という用語の下に、これまで何が目指され、何が語られてきたのか。まず、日本にサンクチュアリが導入される前に思い描かれていたことを、「日本野鳥の会」の創始者、中西悟堂のことばの中から見つけた。この用語がもともとの語義から発して野鳥保護・自然保護のための場所の呼び名として用いられるようになった経緯、それが日本に最初に導入された時期については定かではないが(注1)、中西悟堂は、野鳥の会の人々をはじめとする自然愛好家や自然保護の活動家に、サンクチュアリという構想を呼びかけて実践に移そうとした人物だと思われる。その後、日本野鳥の会において、1981年、北海道のウトナイ湖に日本初のバード・サンクチュアリが誕生した。このとき、またその後に続くサンクチュアリ創立によって、「バード・サンクチュアリ」という用語が世に知られるようになった。

注1 戦後直ぐの頃、山科鳥類研究所と関わりの深かった鳥類学者オースティン博士がサンクチュアリ(sanctuary)のことを日本人に伝えたらしい。それは、アメリカのAudubon協会がそのジュニアクラブのための愛鳥教育の場として設立したサンクチュアリのことであったという。(『中西悟堂生誕111年の集い』〔2006年11月16日開催〕で関係者に質問、ご教示いただいた)。これについては、今後資料調査する予定。

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