* 「聞き耳頭巾」を持つ人々:ジム・ノルマン *
【本当の出遭い、つながり(3/3)】
そうは言いながら、ここでノルマンが伝えていることは、何も「宇宙人」を引き合いに出さなくても、わたしたちに十分理解できることでもある。なぜなら、わたしたち人間の日常生活において、人間同士の出遭いややりとりで'一瞬の笑顔が千の言語にも勝る'ことは、日常的かつ頻繁に、起こっていることではないか。そして、人間同士だけでなく、たとえば日常的なヒトとコンパニオン・アニマルの間の関係性ややりとりにおいても、わたしたちは即座に、わたしたちがその動物に示す態度や呼びかけに対する、彼らの'表情'や'動き'から、彼らが何を感じ、お互いの関係性がどうなっているかを、読み取っているではないか。わたしたちは実は、犬に訓練として教えられる「オテ」「オスワリ」等々の命令的一方的言語体系という、ごく単純かつまらないコミュニケーションの次元をやすやすと乗り越えて、その犬が「オテ」の命令をどのように受け容れざるを得ない環境に追い込まれたか、そうしたコミュニケーションの次元において強制的に命令に従わされながら何を感じているか、時にはその命令に服従しつつもっと奥深いところで飼い主にいかに従っていないかを、容易に観察するではないか。つまりわたしたちは、「言語」を習得させたり、従わせたりする次元のコミュニケーションと、「笑顔」によって瞬時に相手の姿を見て取るような次元のコミュニケーションとを、多くの場合多次元的に、行っている。
そして、ノルマンが述べるように、イルカやチンパンジーと話がしたいなら、ヒト言語を苦労して教えるよりももっと有効かつ本質的なコミュニケーション体系があるということなのだ。本サイトで取り上げるコミュニケーターの一人であり動物行動学者であるフォッシーを挙げて、ノルマンは、彼女がその地に棲むゴリラに受け容れられ始めたのは、「複雑な身体の動きで表現するゴリラの言葉を必死で学び、基本だけでも使えるようになってからのことだ」(p. 233)と述べる。そして、このようにわたしたちに問いかける。「熟練したダンサーや合気道の達人がゴリラと生活してコミュニケーションできるようになったら、いったいどんなだろうか」(注13) 。
イルカをはじめとする野生動物たちと'本当のコミュニケーション''より本質的なコミュニケーション'を成し遂げたノルマンは、イルカは「自然の叡智とわれわれ自身とを協調させるための意識の旅の、かけがえのない水先案内人といえよう」と述べている。しかしまた、イルカだけでなく、七面鳥もコクジラもミトコンドリアも、わたしたちに自然の叡智を伝えてくれるものだ。最後にノルマンは、しかしながら、こうも付け加えている ―― 「残念ながら、人類はすでに大きなクジラのほとんどを殺してしまった。もはや彼らに長期にわたる交流手段の探求を気軽に手助けしてもらえそうにない」(『イルカの夢時間』 吉村則子, 西田美緒子訳 p.269)。
注13:因みに、管理者がヨガ、気功、太極拳等を始めたのは、このノルマンの言葉どおり、小鳥の声を様々な形で聴き取りたいと考えたからです。その結果は、まだ科学的な表現のまな板には載りませんが、個人的には小鳥から多くのことを受け止められるようになったと感じています。また、こうした修練の仲間うちの世界では、本サイトで言う異種間コミュニケーションに関わることは、何も驚くに値することではないどころか、コミュニケーションのすごい次元まで達した先輩がいらっしゃいます。
毎朝、小鳥たちとヨガや瞑想を続け、いつかはその展開をご報告できればと思います。
<参考文献と資料>
Crail, Ted. Apetalk & Whalespeak: The Quest for Interspecies Communication.
Chicago, Contemporary Books, 1983.
ノルマン, ジム. イルカの夢時間. 吉村則子, 西田美緒子訳. 工作舎, 1991.
ノルマン, ジム. 地球は人間のものではない: Spiritual Ecology. 晶文社, 1992.
ノルマン, ジム. 地球の庭を耕すと: 植物と話す12か月. 工作舎, 1994.
Nollman, Jim. Dolphin Dreamtime: The Art and Science of Interspecies Communication. New York, Bantam Books. 1987.
Nollman, Jim. The Man Who Talks to Whales: The Art of Interspecies Communication. Boulder, Sentient Publications. 2002.
Nollman, Jim. Ed. Interspecies Newsletter. 2001-
http://www.interspecies.com/
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