* my bird sanctuaryにいらっしゃいませんか *

【 バード・サンクチュアリの思想: 2.“ミニ・サンクチュアリ”をつくろう (4/6)】

 さて、それでは日本においてはどうなのだろうか。日本のスーパーマーケットでここまでのことを考え、市民ぐるみで自然に親しむということはあるのだろうか。残念ながら、わたしは知らない。ヨーロッパの公園と比べ、日本の公園では、野外テラスの近く、あるいは手の上まで野鳥がやって来てパンくずをついばむということは無い。もちろん、緑を奪う開発の波、野生生物問題や駆除のニュースなどが目に付くなか、北国や山小屋などで餌の少ない時期の野鳥に餌を与え、野鳥を助けたり、傷ついた鳥たちを保護して、野鳥と親しくなれた方のニュースも耳にする。そして、自然や生態系を守るため、地道な活動をされてきた心強い先輩達も日本にいない訳ではない。だが、一般的には、ごく普通の人々がミニサンクチュアリの意味や可能性に気付き、日本各地でその地域の人々に広まっていくというところまで、人々にこうした意識があるようには見えない。
 日本野鳥の会は、身近な場所に野生の生きものが棲める環境をつくろう、とミニサンクチュアを創る呼びかけを、1982年の秋から行っている。ニ年後にはさらに、キャンペーンを展開し、1985年時点で、全国に二百を超えるミニサンクチュアリが誕生したという。また、各々のミニサンクチュアリにおいて、日々の記録の集積から、貴重なデータが生まれる可能性があるとも述べられている。さらに、こうした呼びかけはまだ歴史が浅いので、どこのミニサンクチュアリにどんな生きものがいるかといった基礎的なデータをお互いに持ちよれば、都会の自然や野生生物を守る上で、意味のある貴重なデータとなるという。同会では、個々の記録を集め、自然の保護へ還元できるデータづくりも含め、「ミニサンクチュアリ登録制度」(注4)を発足させている。
 こうしたミニサンクチュアリは、こころある人によって、その人の身近で、維持管理されていくものである。そこでは、野鳥や小動物と人間とがバランスよく共存できるような配慮がなされている。日本野鳥の会では、空間の面積や形態は問わず、それがベランダであれ、庭であれ、工場の敷地であれ構わず、「大切なのはこの持主が、自分の土地をミニサンクチュアリとすると宣言し、野鳥をはじめとする野生生物の生きる場としようという意識をもって、それを実践すること」であると述べている。

注4 『日本野鳥の会』サンクチュアリ室に問い合わせたところ、現在この制度は残念ながら継続されていないそうだ。(会、関係者の皆さまに、問い合わせに丁寧にお答えいただきました。この場にて深謝させていただきます。)

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