* my bird sanctuaryにいらっしゃいませんか *

【バード・サンクチュアリの思想: 2.“ミニ・サンクチュアリ”をつくろう (6/6)】

  ミニサンクチュアリは、何よりもそれを実現させる個人、管理人に、自然とふれあい、生きものと共生するためにその声に耳を澄ませ、学び、感性豊かに暮らす空間を与えてくれる。そして、大規模サンクチュアリと同様、自然や生きものを守るだけでなく、管理人や家族、近隣の人々に、自然と触れ合うきっかけや、自然・野鳥を守るという意識を育てるものとして考えられていると言えそうである。『窓をあけたらキミがいる: ミニサンクチュアリ入門』では、「緑のネットワークをつくる」という項で、サンクチュアリのあり方を次のような想いにまで拡げている。

ヒトが他の動物たちと共存し得ないほど決定的にその生息地に侵入する以前には、自然はどこでもそこにすむ生きものたちにとって「サンクチュアリ」であったのです。自然をかくも大規模に破壊し、変更する力をもつのがヒトならば、ヒトはまた自然を守り、復元する力と意志をもつことも可能です。その具体的な方法のひとつがサンクチュアリです。
 移動する動物たちにとっては、繁殖地や越冬地と同様に重要なのが、旅の途中で休息し、食物を補給するための中継地点。とくに大海原や赤道を超えて大移動をする多くの渡り鳥にとっては、渡りのルートに沿ってこうした中継地点が具合よく点々と存在していることが、種の存続にとって不可欠の条件になります。そこで、中継地点として重要な地域を次々とサンクチュアリ化し、サンクチュアリ・ネットワークとして守っていくことが必要です。これは一国だけでできることではなく、渡りのルートに関わる国々が協力し合わなければなりません。日米、日豪、日中間結ばれている渡り鳥条約(または協定)や、水鳥のために重要な湿地を指定して保護するラムサール条約などは、自然保護のための国際協力が行われている実例です。

             (『窓をあけたらキミがいる: ミニサンクチュアリ入門』 p.122)

 地球は、もともと自然豊かな星であり、それ自体サンクチュアリと言えるようなところであった。それを破壊してしまったのは人間。しかし人間には、自然を破壊する力もあれば、自然を守り復元していく力もある。個人がミニサンクチュアリを創り自然を見守っていくことから始まり、このミニサンクチュアリの精神が広がれば、サンクチュアリは小さな点から面へと広がったり、ネットワーク化されてゆく。そうすれば、広がっていくだけでなく生態系を守るというその力も増し、地球が再び自然豊かな星へと回復していく。ここには、そんな<サンクチュアリ=聖地>の思想が息づいているようだ。
 この本からさらに引用すると、1973年に環境庁が実施した第一回自然環境保全基礎調査の植生自然度調査によると、市街地・造成地等、緑がほとんど存在しない地域の比率が高い都道府県は、東京都(40%)、大阪府(34%)、神奈川県(28%)、愛知県(18%)と三大都市圏に集中しており、東京都区部では87%、大阪市では91%と、特に高くなっている。都市における森林や草原の喪失は、そこに棲む小動物の減少や死滅を招き、日々の日常生活から、うるおいやゆとり、季節感といった自然との関わりによって生じる感覚が失われる。ヒト以外の生きものだけでなく、ヒトに及ぼす影響も少なくないのだ。
 わたしたち一人一人が、ベランダの一角の植え込みであってもミニサンクチュアリとすれば、さらにそうした試みが広がり、つながれば緑の環境のネットワークが増えていく。ひとつのミニサンクチュアリで生きられる野生生物の種類や数には限りがあっても、全体でみれば、もっと大きな規模の生態系を支えることができる。「私有地の活用を本気に考えていくことが、いまや、都市の緑を増加するために欠かせない要素」となっており、「ミニサンクチュアリの輪が確実にふえれば、都心や高層ビル街にも、失った緑をとり戻し、わずかに残された緑を守っていくことが」できる。それは、「ミニサンクチュアリを楽しもうとする一人一人の意志にかかって」いるという。

★前のページへ戻る
「『my bird sanctuary』目次のページへ戻る
★次のページへ進む