* my bird sanctuaryにいらっしゃいませんか *

【サンクチュアリを探して(3/7)】

 そのすぐ後から、本格的な土地探しが始まった。わたしのこの夢に対して、周囲の人々は、拍子抜けするほどすんなり受け容れてくれた。この時代、必ずしもキーワードが<鳥>でなくても、似たような夢を持つ方は本当に沢山いらっしゃるのだ。最初の一、ニ年は、不動産屋をめぐり、いくつかの土地を検討したが、相手にされなかったり、候補地を案内されても希望と合わず ―― いや、それどころか、自分自身の希望条件もしっかりしておらず、右往左往するなさけないありさまだった。田舎暮らしを試みて物件探しをした経験のある方々や、ヨガや氣功の親しい仲間が、いろいろな土地探しの情報をくれたり、バックアップをしてくれた。また、不動産屋に紹介された、筑波山中にある物件を調べに行ったときに、山の東南の八郷町でバードウォッチングのリーダーをしたり自然観察の先生をされているS先生の存在を知ることができた。
  それは素晴らしい出逢いだった。ご自分の庭(借地)とそこから広がる雑木林を手入れし、多様な野鳥の立ち寄る見事な生態系を管理され、自然観察の経験を積み、自然との共生を実践していらっしゃるS先生と、訪ねていくと庭のブルーベリーの実を摘み、丁度良いころあいで美味しいブルーベリー・ケーキを焼いて供してくださる優しく穏やかな奥様は、その後わたしの師匠となった(!)S先生は、ご自分の管理地の管理だけでなく、自然観察会を開いたり、知人の山林を管理されたりしている。さらに、小学校の総合学習で自然観察指導をされた後、ご自宅まで子どもたちを招待して雑木林のフィールドでアフターレクチュアーをされたりする。もう一つのライフワーク、近くの特別養護老人ホームでボランティアをされる中では、お年寄りたちを自然の中に連れ出せるようにと、隣の雑木林を改造して、お年寄りを車椅子で連れ出してこころの元氣を再生させるような活動もされている。わたしにとっては、多方面からの師匠だ。
 また<聖地>とはいかなるものかについては、思想面・精神面から、氣功やヨガの諸先生方、先輩方から、言葉にならない教えを多くいただいてきた。わたしにとって、サンクチュアリとは何であるか、それはどこに存在し、いかなるものなのかについては、後に書くことにしたいが、土地を購入しただけでは、それがどれほど美しい土地でもサンクチュアリではない。緻密で心配りの行き届いた森林の管理や、土や水の管理、生きものに対する管理や気遣いについて、どれだけ知識と実行力があっても、まだ十分ではない。さらには、自然教育や環境教育に関する知識があり、リーダーシップや企画力があり、実際にそうした活動ができたとしても、それだけでは十分でない。ここまでのことだけでも、それはそれは大変なことであるけれども −− それだけでは十分でないのだ。静寂と平穏の中で命あるものと対話できること、「サンクチュアリの光をやわらかに広げていく」ことのためには、命のつながりや調和、その一体感について耳を澄ますこと、感じること、今、ここで、揺ぎ無くそのように生きていこうとすることが大切になってくる。それは、わたしの構想する異種間コミュニケーションの方法論でもある。様々な修練を通して、このことの実現のためには、自分自身の姿勢や精神、内面的なことが大きく問われることを、いつの間にか叩き込まれた気がする。

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