* my bird sanctuaryにいらっしゃいませんか *

【サンクチュアリを探して(5/7)】

 このときのI先生のひと声で、氣功の先輩で染色家のAさんが、ご友人の笠間市にある陶芸ギャラリー『陶歌』さんに声をかけてくれた。『陶歌』さんは、予算の限られた陶芸家でも工房を据えられるような、山間の土地に詳しい不動産屋をご存知だった。陶歌さんにお目にかかってみると、温かで素晴らしい方で、たちどころにわたしの夢を受けとめてくださった。そんなことはかつてなかった。“何か運命的なのでは?”とわたしは感じ、ここから急に、つくばを遥か北上したところにある笠間市付近の山の雑木林を、候補地として考えることとなった。
 一ヵ月後、その不動産屋が暇を見つけては「どんぐりのある山を歩いて」候補地を探して下さっているので連絡が行くだろう、とAさんから連絡があった。このとき候補地として紹介いただいたのは、笠間市の北の山裾の二箇所の雑木林。幾人かの方々に仲介していただいている間に、いつの間にかわたしの希望が3千坪ということになっており、話を伺うと、それに近い坪数の土地が手に入りそうな様子だった。それらの土地は売地ではないのだが、交渉によって手に入る可能性がある、とのことだった。まずは適地かどうかの判断をするために、現地に幾度も足を運び、建築デザインを専門職としている知人に、調査を依頼した。
 その場所はどちらも、山の麓の静かな谷戸で、雑穀や豆を作っている段々畑の奥にある。最初に訪ねたときは、その静寂さ平穏さに心打たれた。独りでずっと瞑想をしたい、と感じたほどだった。そう、「そこにいられれば幸せ」という自然の滋味溢れる場所なのだが、実はそれだからこそ、現実には専門の友人に調査を依頼してまで考えなければならないことがあった。それは主に、どちらの土地も、ひっそりとした美しい自然がたたずむ、人里からまた奥に入った場所だということだ。まず、雑穀や豆類の畑や梅林の手入れ以外は人の入らぬその奥のところに、人が入り鳥たちに親しんで暮らせるかどうか、について様々な問題がある。どちらも田畑の手入れのための作業車が農地をジグザグに進むための細い道しか通っていない。農地の上にあるので、豊かな水が確保できそうだが、農地の水源との関係やじめじめした立地条件も、家を建てる上で困難な問題となってくる。また、何よりも、そうした閑静な自然の中に人間が住み着くことによって、自然環境や景観へのダメージを与えないだろうか、与えるとすればどの程度の規模になるのか ―― そんなことが大きな気がかりだった。道を改造したり、家を建てたり、電気を引いたりするために、自然や環境にどれだけのマイナスを与え、また人が努力して守っていくことで、そのマイナスが補えるのかどうか ―― これらのことを一部調査してもらったが、見通しはたたないままとなった。

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