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【サンクチュアリを探して: 1.保護と再生のハードル(1/2)】

 候補地を探しながら、筑波山近辺の山里を回るうち、荒れた杉林やヒノキ林、人間によってダメージを与えられた場所があまりにも多いのが目に付いた。植林された林でも、種類は少ないが、鳥をはじめとする生物が居ることには居る。だが、本来は自然な植生であったはずの場所に、植林をした後でそれを放置して、うっそうと暗い、荒廃した状態にしてしまったのは人間だ。これでは杉やヒノキも利用価値がなく、花粉を撒き散らし、人を悩ませるだけではないだろうか。また、不法投棄などで目を覆いたくなる林、廃材や廃車などを積み上げた荒地 ――。野鳥や動物たちにしてみれば、かつてこの土地の分も、住処を追われてきたわけだ。わたしは、こうした痩せて荒れた杉林を少し切り開き、陽が差し込む場所を作り、広葉樹を植樹して、明るい混交林にして、野鳥の棲める場所にできないだろうかと考えた。かつて追われた野鳥たちを、再び呼び戻すことはできないか? 人間が野鳥たちから森を奪うばかりでなく、彼らに森を還すということがあってもいいと思った(注11)。
 ちょうどそう感じていたとき、数年手入れがされていない杉林を売りたいという方を、親切な友人のOさんが探し出して紹介してくれた。これまであまり候補地を探しに行っていなかった、筑波山の西側、つくば市と明野市(現 筑西市)、各々700坪および1000坪の杉林である。数年前まではよく手入れされていたが、三年ほどはそのままになっていたらしい。どちらの土地も、筑波山の裾野の、肥沃な田んぼの広がるところにあり、これまで見てきた山間の土地のような傾斜がない、平坦な土地だ。周囲は雑木林・杉林に取り囲まれているが、それだけでなく、豊かで開けているだけあって、ゴルフ場、芝畑や栗畑に近接している。また、周辺には、工場、工業団地、民家、そして田舎にありがちな、廃車や廃材を積み上げて放置している作業場、けばけばしいダンプカーの駐車場、風俗、看板、不法投棄、などなどがあった。しかしまた、つくば市700坪の土地では、周辺にフクロウ、エナガ・シジュカラ・コゲラの群れ、ウグイス、などが見られ、明野市1000坪の土地では、周辺にエナガ・シジュウカラ・コゲラの群れやコジュケイ、ウグイスがけなげに棲んでおり(後にフクロウの番いも観察)、もとは豊かな自然があったことがうかがわれた。ただし、周辺環境や今後開発などで環境がどう動いていくかについては、かなりの不安が残った。つくば市の土地は、隣の雑木林に目も覆いたくなるほどの不法投棄(粗大ごみ、家庭ごみ)がなされており(注12)、明野市の土地は、その土地の後ろにあたる土地に、緑のきれいな松や大きな広葉樹があっていい感じだが、ゴルフ場に隣接し、周囲に工場や芝畑がある。
  豊かだったからこそ、昔から人の手が加わり、杉林となった土地や、不法投棄、芝畑やゴルフ場の農薬、周辺の環境が今後どう動いていくかについて、わたし個人は不安を感じた。だが、このあたりの土地に女系三代続けて住んでいるOさん(とそのお母さんとおばあちゃん)には、不法投棄は人が住めば知った人のところにはなされないし、芝への農薬は年3、4回だがわたしの言うように100%汚染されていないところなんてありえないと言われた。また、つくば市の中央部と違い、この辺りは高齢化、過疎化が進むので、更なる開発の心配は余りないという。また、Oさんからは、ある意味、今の時代の人間は、汚染を拒否することなど不可能で、汚染などの問題に自ら苦しみながらも生き抜いてきたのが人間だ、と言われた。そんな中で少しでも清らかな環境を作ろうとするなら、たとえば森に巣箱をかけ、子どもたちの自然教育に携わるなど、未来に向けて自分の立っているところから行動しなければ、というOさんの言葉の鋭さ・深さは、わたしの胸中にずっと残った。

注11  もちろん、「自然」とは何か、を問うなら、それはそれで、わたしが、自分の好みの(この場合、"元にあった植生に近いと推測できる")林を人工的に創ることになるので、「自然に戻す」というのは正確ではない。

注12  不法投棄は現在、都会の周辺にある田舎の大きな問題、汚点となっていると思う。筑波山周辺では、どんな山林、雑木林でも、誰かが侵入できそうならとにかくそこら中にごみが捨ててある。ごみの山も多く見かける。家庭ごみ、粗大ごみ、産業廃棄物、廃材、廃車、何でもありで、時には風で舞うごみがあったり、有害な化学物質や危険物が入っているごみがあったり、重油が流れ出したりしている。
 
特に主要道路に近い、人目につかない場所はひどい。個人も専門業者も捨てるそうだ。そして、一度ごみを捨てると、その場所がマークされるのか、次に捨てに来る人がそこならいいと考えるのか、段々とごみが増え、山積みされていく。
  先日、イギリス人をバードウォッチングに案内していたら、美しい森にごみの山が散らばっているのにとても驚いていた。日本人がこうしているということを、何と説明してよいのかわからなかった。

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