* my bird sanctuaryにいらっしゃいませんか *

【サンクチュアリを探して: 1.保護と再生のハードル(2/2)】

 こうした日本の田園の、見捨てられた杉林や荒地を、光溢れる明るい自然林にしていくことは可能だろうか? もし可能なら、その際、どんな条件が必要で、どんな点に注意を払う必要があるのだろうか? わたしは、【サンクチュアリの思想:3.庭に小鳥を呼ぶ】で紹介した『野鳥を呼ぶ庭づくり』(藤本和典)の本や森作りの本、田舎暮らしの本など資料を集め勉強を始めた。雑木林の管理や再生、野鳥救護の講習会や研修会、S先生のフィールドでの実習などにできるだけ足を運ぶようにしていった。
 候補となる杉林を師匠のS先生に観察していただいたが、残念ながら、彼のフィールドのような雑木林に再生していくのは難しいか、何十年もかかると言われてしまった。樹木の生長には時間がかかり、さらにそのために必要な日当りが、周辺の杉林に阻まれて十分ではないのだ。さらに、これらの杉林の時価は、笠間で見た雑木林よりも高額なのだ。笠間の土地なら今の予算で3千坪近い面積が手に入ると言われたが、つくば・明野では一千坪でもそれ以上の値段になるだろう。杉林は、土地の人にとってかつてはお金をかけ、思い入れがある分、値段が高い。しかも、それを自然な森にしていくための費用がかかる。それでも、地球に"緑を足す"ことの意味や、こうした土地でもけなげに生きてきた鳥たちと出遭え、彼らを守りたいという気持ちは、今もこころに揺らす。

 笠間の候補地 ―― 山を背負い、自然に包まれた山の谷戸 ―― は、そこに行った途端「瞑想していたい」と感ずるほど静かで美しい場所だ。しかし、そうだからこそ逆に、人が入り、車の通る道をつくることによって、その場所に自然破壊が起こり場所を悪くしてしまう可能性があり、それは絶対に慎まなければならない。人が通えて鳥を守れるようなサンクチュアリになるかどうかは分からなかった。また、my bird sanctuaryとした場合、つくばの職場と笠間のフィールドの間の長距離を始終往復することは、自分の気力や体力を考えても不安が残り、しかも、大量のCO2を撒き散らし、道路建設の更なる拡大に加担していることになる。それにも罪の意識を覚えた。
  もちろん、マイナスの面ばかりでなく、こうした雑木林をさらに手入れする(蔓やしの竹を払う)ことによって、より豊かな生態系、渡り鳥をはじめとする多様な野鳥が利用する、という意味で良くしていくことは可能だ。今後の行政の計画によってどうなるかわからない土地を、良い目的を持って管理するために最善のことをし、後世にそれを残すことには意味があると思う。だが、最善のことをするとはどういうことなのか。この答を見極めるには勉強不足だった。もっと、経験を重ね、考えを深めていきたいと思った。

 こんなに条件の違う土地を候補地として迷うのは、根本の考え方がまだしっかりしていないからだと思う。ここ五年くらい、候補地があっては、その度に勉強・経験はできたが、どんなところがmy bird sanctuaryにふさわしい土地なのかについて、十分に直観が冴えていないのが、なさけないと言えばどれくらいなさけないか。

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